賃貸の害獣駆除費用は誰が払う?大家と借主の負担を法的根拠から解説
賃貸物件でネズミやコウモリなどの害獣が出た場合、駆除費用は原則として大家(貸主)が負担します。
根拠は民法606条1項の修繕義務です。
ただし、ゴミの放置など借主に原因がある場合は借主負担。
つまり負担者は「誰が原因をつくったか」で決まります。
この記事では、負担者の分かれ目、管理会社への連絡手順、対応してもらえないときの選択肢まで、法的根拠つきで整理しました。
- 「本記事の法的注意事項について」
詳細:環境省 野生生物課・野生鳥獣の捕獲について
イタチ・ハクビシン・コウモリなどの野生鳥獣は「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」の対象で、無許可の捕獲は禁止されています。
・ 特定外来生物の取り扱い
アライグマは「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」の対象で、無許可の飼養・運搬・放出が禁止されています。
詳細:環境省 特定外来生物・薬剤の使用について
殺鼠剤や忌避剤などの使用は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に基づき、製品の用法用量を守って使用してください。
詳細:厚生労働省・本記事の位置づけ 本記事は一般的な法令の解説であり、個別事案の法的助言ではありません。
契約内容によって結論が変わるため、争いになりそうな場合は弁護士や法テラス等の専門窓口にご相談ください。
※この記事は2026年8月時点の情報に基づいています。サービス内容や料金、法規制等は変更される場合がありますので、最新情報は各サービス提供会社および関係機関にご確認ください。
※害獣駆除の効果には個体差・環境差があります。記載された成功率や効果は一般的な目安であり、すべてのケースでの効果を保証するものではありません。
✔賃貸の害獣駆除費用は誰が払う?結論は「原因」で決まる
✔負担者早見表|大家負担と借主負担の分かれ目
✔害獣を見つけたら|管理会社・大家への連絡手順4ステップ
✔管理会社が対応してくれないときの3つの選択肢
賃貸の害獣駆除費用は誰が払う?結論は「原因」で決まる

負担者を分けるのは「害獣が侵入した原因が建物側にあるか、借主の使い方にあるか」という一点です。
この章では、原則となる大家の修繕義務、例外として借主負担になるケース、窓口となる管理会社への向き合い方を順に整理します。
原則は貸主(大家)の修繕義務
害獣駆除は、原則として貸主(大家)が費用を負担します。
民法606条1項は「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」と定めているためです。
屋根の隙間や配管まわりの穴といった建物側の劣化から害獣が入り込んだ場合、それを塞ぐ工事も駆除も「使用に必要な修繕」に含まれます。
同じ条文には「賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない」というただし書きもあります。
ここが借主負担になる分岐点です。
条文の全文はe-Gov法令検索(民法)で確認できます。
借主負担になるケース
借主負担になるのは、被害の原因が借主の行動にある場合です。
民法400条・616条(594条1項準用)の善管注意義務・用法遵守義務に反した状態が代表例です。
・生ゴミや食べ残しを室内・ベランダに長期間放置していた
・ペットフードを開封したまま置き、エサ場になっていた
・窓や換気口を常時開放し、そこから侵入させた
・借主が勝手に開けた穴やDIY改造が侵入口になっていた
・異音や糞に気づきながら報告せず、被害を拡大させた(民法615条の通知義務違反)
・契約書の特約に「害虫・害獣駆除は借主負担」と明記されている
逆にいえば、これらに当てはまらなければ大家負担を主張できます。
「天井裏から足音がする」「糞や臭いで困っている」——害獣被害にお悩みではありませんか? 全国の野生鳥獣による農作物被害額は年間約188億円。(農林水産省:令和6年度農作物被害状況) 福岡・佐賀エリアでは、アライグマやハクビシン、イタチに[…]
管理会社が窓口になることが多い
連絡先は大家ではなく管理会社が窓口になるのが一般的です。
そして、原則として借主が勝手に業者を呼ぶのは避けてください。
先に業者を手配してしまうと、後から費用を請求しても「同意していない」「その金額は高すぎる」と支払いを断られる恐れがあります。
ただし例外的なケースもあります。
民法607条の2は、賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき、または急迫の事情があるときは、賃借人が自ら修繕できると定めています。
この条文が使えるかどうかを分けるのは「通知した記録が残っているか」です。
負担者早見表|大家負担と借主負担の分かれ目

原因ごとの負担者の目安を一覧にしました。
実際の判断は契約内容や被害状況で変わるため、あくまで交渉の出発点として使ってください。
原因別・費用負担者の一覧表
建物の劣化が原因なら大家、借主の使い方が原因なら借主、というのが基本の考え方です。
- 大家(貸主)負担になる原因
- 屋根・外壁の経年劣化、構造的な穴、共用部分、入居時からの生息
- 借主負担になる原因
- 生ゴミ・ペットフードの放置、無断の穴あけ・改造、報告を怠った被害拡大分
- 判断の根拠となる条文
- 民法606条1項(修繕義務)/民法400条・616条・594条1項準用(善管注意義務・用法遵守義務)
| 発生原因 | 負担者の目安 | 根拠 |
| 屋根・外壁・基礎の経年劣化による隙間 | 大家 | 民法606条1項の修繕義務 |
| 建物の老朽化・築年数による構造的な穴 | 大家 | 民法606条1項の修繕義務 |
| 屋根裏・床下・共用部分での発生 | 大家 | 借主の管理権が及ばない範囲 |
| 入居時からすでに害獣が住み着いていた | 大家 | 貸す時点で使用可能な状態にする義務 |
| 生ゴミ・ペットフードの放置 | 借主 | 民法400条・616条(594条1項準用)の善管注意義務・用法遵守義務 |
| 借主が開けた穴・無断の改造が侵入口 | 借主 | 民法606条1項ただし書き |
| 気づいていたのに報告せず被害拡大 | 拡大分は借主 | 民法615条の通知義務違反(拡大分は民法415条の損害賠償として処理) |
| 契約書の特約で借主負担と明記 | 借主(有効な場合) | 契約自由の原則/貸主が事業者にあたる場合、消費者契約法10条により無効と判断される可能性があります。 |
判断が分かれるグレーゾーン
実務でもめやすいのは、原因を一つに特定できないケースです。
・原因不明:侵入口が特定できないと、どちらの責任か証明できません。専門業者の現地調査報告書が判断材料になります。
・隣室や空室からの侵入:建物全体の問題なので大家負担になりやすい一方、原因の特定に時間がかかります。
・以前からネズミがいた形跡がある:入居前からの被害であれば大家負担ですが、証明には入居直後の記録が必要です。
・借主のゴミ管理と建物の隙間、両方に原因がある:話し合いで割合を決める流れです。
いずれの場合も、侵入口が何箇所あり、どこが劣化しているかを第三者の目で記録しておくと交渉が進みます。
\「原因がどこにあるか」から調べます/
害獣を見つけたら|管理会社・大家への連絡手順4ステップ

やることは「記録して、書面で伝えて、負担者と期限を確認し、回答を書面でもらう」の4つです。
この順番を守るだけで、後から費用を請求されるリスクを大きく減らせます。
STEP1:証拠写真と発生日時を記録する
最初にやるべきは記録です。
・糞・足跡・かじり跡・被害箇所を日付が分かる形で撮影する
・物音がした日時と時間帯をメモに残す(夜間の足音は最も多い発見のきっかけです)
・臭いや目撃があった場所を間取り図に書き込む
記録があるほど「入居前からの被害」「建物側の劣化」を主張しやすくなります。
天井裏・屋根裏に住み着く動物は、足音・糞・活動時間で5種類に見分けられます。 ・カリカリ.カサカサと小さな音(夜間) → ネズミの可能性 ・ドタドタ.バタバタと素早い音(夜間) → イタチの可能性 ・ドスドス.ドタドタと重い音(夜[…]
STEP2:管理会社に書面またはメールで連絡する
連絡は必ず文字が残る手段で行ってください。
電話だけでは「聞いていない」と言われたときに反論できません。
メールやチャットで、発見日・被害内容・写真を添えて送るのが確実です。
この通知が、民法615条の通知義務を果たした証拠にもなります。
STEP3:負担者と対応期限を確認する
次に、費用をどちらが負担するのかと、いつまでに対応するのかを確認します。
「駆除費用の負担者はどちらになりますか」「いつまでに業者を手配いただけますか」と具体的に聞くのがポイントです。
期限が曖昧なままだと、放置されても催告のタイミングを失います。
STEP4:回答は書面で受け取る
回答もメールなど記録の残る形でもらってください。
口頭で「大家さん負担でいきます」と言われても、後から覆される可能性があります。
負担者・作業内容・実施予定日の3点が書面に残っていれば、トラブルはほぼ防げます。
管理会社が対応してくれないときの3つの選択肢

連絡しても動いてもらえない場合、取れる手は大きく3つです。
いきなり業者を呼ぶのではなく、順番に進めるほど費用を回収しやすくなります。
選択肢①催告して対応を待つ
まずは期限を切って書面で催告します。
「〇月〇日までに修繕・駆除の対応をお願いします」と明記して送るだけで、対応が動き出すケースは少なくありません。
この催告は、民法607条の2にある「相当の期間内に修繕をしないとき」を満たす前提にもなります。
反応がない場合は、内容証明郵便に切り替えると本気度が伝わります。
選択肢②自分で駆除を手配し後から費用を請求する
催告しても動かないときは、借主が自分で手配する道があります。
民法607条の2により、通知後に相当期間対応がない場合、または急迫の事情がある場合は賃借人が修繕でき、その費用は民法608条1項の必要費として賃貸人に直ちに請求できます。
ただし、次の3点は必ず押さえてください。
・手配前に「対応がないため当方で手配します」とメールで通告しておく
・見積書・作業報告書・領収書をすべて保管する
・一般的な費用目安から外れた高額工事は認められにくいため、内容を必要な範囲にとどめる
手順を飛ばすと自己負担になるおそれがあるため、記録を残しながら進めてください。
選択肢③自治体の相談窓口・法テラスに相談する
話し合いで解決しないときは第三者に入ってもらいます。
・自治体の住宅相談窓口・消費生活センター:管理会社や不動産会社との契約トラブルについて無料相談を受け付けています(個人大家との紛争は対象外の場合があります)
・法テラス:条件を満たせば無料法律相談や弁護士費用の立替制度を利用できます(日本司法支援センター 法テラス)
・国土交通省 地方整備局(賃貸住宅管理業の登録行政庁):管理会社の管理業務そのものに問題がある場合の相談先です
\交渉に使える調査報告が必要な方へ/
賃貸の害獣駆除費用に関するよくある質問

問い合わせの多い5つの疑問に、結論から答えます。
・共用部分で害獣が発生した場合は誰の責任ですか?
・害獣が原因で退去したら引っ越し費用は請求できますか?
・賃貸契約書の特約は優先されますか?
・賃貸でコウモリやハクビシンが出た場合の駆除費用はいくらですか?
・大家に連絡したのに対応してもらえません。賃料は下げてもらえますか?
共用部分で害獣が発生した場合は誰の責任ですか?
共用部分は大家(管理者)の負担です。
廊下・階段・屋根裏・外壁・共有の物置などは借主の管理権が及ばないため、民法606条1項の修繕義務の範囲に含まれます。
発見したら管理会社へ写真つきで報告してください。
害獣が原因で退去したら引っ越し費用は請求できますか?
請求できる場合がありますが、簡単ではありません。
大家が修繕義務を果たさず、住み続けられない状態が続いたと認められれば、債務不履行として損害賠償を求める余地があります。
認められるかは通知の記録や被害の程度によるため、法テラス等で個別に確認してください。
賃貸契約書の特約は優先されますか?
原則として有効ですが、無条件ではありません。
「害獣・害虫駆除は一切借主負担」といった特約でも、借主に一方的に不利で建物の劣化まで負わせる内容であれば、貸主が事業者にあたる場合、消費者契約法10条により無効と判断される可能性があります。
まずは契約書の該当条項を確認してください。
賃貸でコウモリやハクビシンが出た場合の駆除費用はいくらですか?
廣光の場合、駆除作業は33,000円〜(税込)、侵入口を塞ぐ対策工事は230,000円〜が目安です。
2025年実施 害獣駆除業者利用者調査(N=49・廣光調べ)では、実際に支払った費用の最多価格帯は5〜10万円(31.7%)、平均は65,800円でした。(この調査は害獣駆除全般が対象で、コウモリ・ハクビシンに限定した数値ではありません。)
建物の構造や被害範囲で変わるため、現地調査での見積りをおすすめします。
「天井裏からガサガサ音がする」「夜中にカリカリと何かが動いている気がする」、こうした異変に気づき、不安を感じている方は少なくありません。 屋根裏の小動物駆除で後悔しないために、まず押さえておきたいのは次の3点です。 ✔ 費用の目安は[…]
大家に連絡したのに対応してもらえません。賃料は下げてもらえますか?
要件を満たせば、当然に減額されます。
民法611条1項は、賃借物の一部が使用収益できなくなり、それが賃借人の責めに帰することができない事由による場合、その割合に応じて賃料は当然に減額されると定めています。
ただし「使用できなくなった割合」の認定は個別判断のため、実務では協議になります。
まとめ|賃貸の害獣駆除は「原因」で負担者が決まる

賃貸の害獣駆除費用は、建物の劣化が原因なら大家、借主の使い方が原因なら借主が負担します。
判断の軸になるのは民法606条1項の修繕義務と、民法400条・616条(594条1項準用)の善管注意義務・用法遵守義務です。
やるべきことは次の4つに整理できます。
・被害の証拠を写真と日時で記録する
・管理会社へメールなど記録が残る形で連絡する
・負担者と対応期限を確認し、回答を書面で受け取る
・動いてもらえないときは催告し、それでも進まなければ法テラス等に相談する
勝手に業者を呼ぶ前に通知を残す、この一手間が費用回収の分かれ目になります。
害獣は放置するほど糞尿被害や建材の損傷が広がり、修繕費も膨らみます。
侵入口の特定や被害状況の記録が必要な段階になったら、専門業者の現地調査をご活用ください。
\福岡・佐賀・大分・長崎・熊本・山口の6県対応/













